辞令

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「会いたいな」 「うん」 そんな会話を何度しただろう。 「金曜とかに来れば?」 嬉しかった。そう言ってくれたらいいのにとずっと思っていた。 「いいの?行っても。」 「もちろん。愛実が来てくれるなら。」 「ほんとに…行っちゃうよ。」 「おいで。」 駅まで走ってすぐにでも何でもいいから西へ向かう列車に飛び乗りたいと思った。 「いつくる?」 「えーと…」 カレンダーを見る。どうせ大事な予定なんかない。 「連休は?今度の。」 「連休はちょっと…」 彼が口ごもる。 「連休はまずいのね…」 「ごめん。」 奥さんが来るのだろう。 「奥さん、やっぱり来ることになったの?」 「いや。遊びに来るだけだよ。まだ来てなかったから。」 「そっか…」 気まずい沈黙を破るように彼が言った。 「連休以外ならいつでも大丈夫だよ。」 「うん…」
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