47人が本棚に入れています
本棚に追加
「薙先輩! チョコ貰ってください!」
バレンタインデーの朝。
高校の校門の前で見知らぬ女子生徒2人から、それぞれハート型のチョコを突き出された。
そんな光景を横目に登校中の在校生がニヤニヤしながら、私たちのそばを通り過ぎて行く。
はあ……。
また今年も笑顔を振りまく、少し面倒な1日が始まるのか……。
「ありがとう。良かったら、2人の名前とクラスを教えて貰える?」
「あっ、ごめんなさい。わたし、1年1組の高橋 歩美です」
「同じ、1年1組の加藤 愛菜です」
「そっか、ありがとう」
多分寒空の下、私が来るまで待っててくれたんだろうな。
チョコを受け取った時に触れた2人の指先は氷のように冷たかった。
「寒いから、風邪引かないように気を付けてね」
私はチョコをカバンの中に入れると、鼻の頭が真っ赤になっている2人の頭を優しく撫でて校舎へ向かった。
直後、背後から興奮した悲鳴が聞こえて、思わず私は苦笑した。
最初のコメントを投稿しよう!