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「おはよう」
「おはよ! 今年も凄いことになってるよ」
3年6組の教室に入るなり、クラスメイトが私の机を指差して笑った。
そこには既に、色取り取りの箱が10個近く置かれている。
それぞれに小さな手紙がついていて、開けてみると“好きです”とか、“憧れてます”とか思い思いの文章が書かれていた。
女子から好かれる、女子。
これが、イケメン女子ともてはやされる私……浪川 薙のバレンタインデーだ。
「おはよー、薙。今年もチョコ大量だねぇ」
「浪川! お前女なのに、何でオレより沢山チョコ貰ってんだよ」
「そりゃ、アンタより薙の方がイケメンだからでしょ」
「……お前、酷いことサラッと言うなよ」
クラスメイトの沙耶香と同じ柔道部の隼人がそんなやり取りをしながら、近付いて来た。
「それね。さっき、2年生の子たちが置いて行ったチョコだよ」
「そうなんだ。顔と名前が一致しない子ばっかりだな。個人的に直接渡してくれれば良いのに……」
手紙に書かれた名前を確認しながらボヤいた私を見て、沙耶香は笑っている。
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