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「いやぁ、それはなかなか度胸いるし、無理でしょ? 」
「えっ、何で?」
「薙に1人で直接渡すのは本気の告白する子だけっていうのが、暗黙のルールらしいよ。女バスの後輩たちが話してたから間違いない」
「何だよ、そのルール。まるで浪川のファンクラブじゃねぇか?」
「実際、薙のファンクラブあるからね」
「マジ!? ここ共学なのにあり得ないだろ、普通……」
隼人は沙耶香の情報を聞くなり、目を丸くした。
私もそんな暗黙のルールが存在しているとは、知らなかった。
ああ……。
だから、さっきの1年生も2人で渡しに来たのか。
「イケメン女子もモテ過ぎて大変だねぇ」
「あはは、まあ毎年有難いけど……」
本音を言ってしまうと、顔も名前も知らない子たちから貰ったチョコを食べるのは少し抵抗がある。
それに3年生で部活は引退したとはいえ、柔道をやっている私は体重コントロールがあるから大量のチョコを食べる訳にも行かないんだ。
やれやれ、今年もこれのお返し考えないとな……もうすぐ卒業だし。
昨年はチョコをくれた全員に同じ柄のハンカチを渡したんだけど、今年はどうしようかな。
本当にバレンタインデーなんて面倒で、大嫌いだ。
こんな習慣、無くなれば良いのに……。
私はカバンから教科書やら必要な荷物を取り出して、空いたスペースに全てのチョコをしまい込んだ。
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