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「失礼します」
朝のホームルームが始まるまであと15分というところで、1人の女子生徒が私たちの教室へやって来た。
「おっ! 胡桃ちゃん!」
鼻が高く色白で少し日本人離れした美しい顔立ちに、長い黒髪を1つに束ねている彼女は、確か2年生の藤村 胡桃だ。
彼女は弓道部に所属していて、柔道部の男子たちから絶大な人気を誇っている。
「何? もしかして、オレにチョコくれるの?」
藤村さんが左手に紙袋を持っていることに気付いた隼人が、鼻の下を伸ばしながら彼女に近付く。
「いえ、ごめんなさい。薙さん、少しだけお時間良いですか?」
藤村さんは淡々と隼人を躱して、私の方へ視線を向けた。
「ああ、うん」
私はニヤニヤしている沙耶香を横目に、教室を出て藤村さんと屋上へ繋がる階段へ向かった。
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