イケメン女子の憂鬱

チョコ三昧

私は苦笑してから、藤村さんから貰った紙袋の中をもう一度覗き込んだ。

健康御守……か。

そういえば、バレンタインデーにお菓子と手紙以外のものを貰ったのは初めてだ。

既にあん摩マッサージ指圧師の専門学校へ進学することが決まってる私には、合格祈願は必要ないから、健康御守を選んでくれたのかな？

柔道部でケガの多かった私には、彼女の気遣いは結構嬉しかった。

お返し……何が良いんだろう？

うーん。藤村さんのことはフッてしまった訳だし、私からあまり色々聞き返すのは辞めておこう。

きっと隼人が見たら、このチョコケーキ１口食べさせろ！ とか言うんだろうな……。

どうしよう。先に食べてしまおうか？

いや……やっぱり稽古の後に美味しく頂こう。

私は御守りをブレザーの胸ポケットにしまって、ゆっくり階段を下りた。

こういう暖かい気持ちになれるのなら、バレンタインデーも悪くないのかもしれない。

この時、告白してくれた藤村さんと偶然再会するのは、６年以上先の話だ……。