年上女は年下上司に愛される。

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「今、先輩に断られたらそうなりますね」 カラン、とグラスの中の氷が音をたてて。 沢渡が飴色の液体に口をつけた。 その姿に、どくんと鼓動が跳ね上がる。 あれ? あれ……? コトリとグラスが置かれて、再び彼の視線が私に向いた。 「先輩言いましたよね。年上の女性を落とすには、頼りがいのある男になれって。これでも一応、仕事は頑張ってきたつもりですし、その中で成長もしたつもりです」 あたしに視線を真っ直ぐ向けて。 彼の瞳の中に私が居て。 向けられた真剣な表情は、酔っている様には……見えなかった。 「……俺じゃ、駄目ですか?」 「え……」 言葉が出なかった。 彼が言ったセリフから浮かんだのは、懐かしい記憶。 あたしが、まだ彼の事を後輩として呼んでいた時の事。 『先輩っ! 自分より年上の女性を落とすにはどうしたらいいすかっ!?』 『なあに沢渡、あんた年上好きだったっけ? んー。そーねぇ、年上の女って言っても女は女。やっぱりこう、頼りがいのある男に弱いんじゃない? 仕事でもメンタルでも』 仕事しながら、告げたアドバイス。 切羽詰った彼が、微笑ましかった。 あれは…… 「先輩。今の俺って、先輩にとって頼れる男になれてますか?」 今の彼が目の前で、私を見てふわりと笑ってそう言った。 後輩としての顔はいつの間にか消えていて。 見つめられると鼓動が跳ねてしまうほど、魅力ある人になった彼がいた。
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