ぷろろーぐ

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 時は二十二世紀初頭。  ──とはいっても、二十一世紀と文明レベルはたいして変わっておらず、空飛ぶ車も時空航法装置ことタイムマシンも期待されていた某ネコ型ロボットも現れなかった。現れなかったが、代わりに日本にやって来ているものがある。というか、日本は『そういう国になった』と言った方が正しいのかな。  それというのも、二十一世紀末頃まであったいわゆる『オタク文化』に対する偏見(俺はむしろモラルと呼びたい)……というより、今となっては馬鹿な羞恥心とでもいうのか、そういったものが無くなってオタク文化が大衆文化として浸透しきってしまっているせいだ。いや、むしろ大衆文化となってからはオタク文化、特に萌えにタガなんてない。朝から晩まで萌え。寝ても覚めても萌え。道すがら萌え。ことあるごとに萌え、萌え、萌え!とにかく萌えー!なのだ。  そう、今日本は『大萌え時代』なのだ。アキバ系はとうの昔に死語になった。もはや萌えの中心は秋葉原にあらず。日本そのものなのだ。それが証拠に、今や萌えは世界に羽ばたいている。世界各国で沸き起こる萌えブーム。道行く外国人に聞いてみなよ。ジャパン?ノー、シラナイネ。萌え?オー!萌えのクニデシタカ!こんな風に日本に対する世界の認識すらも、もはや萌えの一言に尽きてしまう。つまりは、日本と萌えは既にイコールの関係なのだ。前に親父が「若い頃の話だけどさぁ、ブロッコリーってググったら真っ先にあの会社がヒットした時には日本ももう駄目かと思ったけど、こうなるとそう思ってのも、馬鹿だったなぁって感じだよな。ははははっ」なんて言ってたけど……親父、あんたは現在進行形で馬鹿。いや、むしろ大馬鹿だよ。間違い無い。断言する。  とにかく、今の日本は萌えという言葉に支配されている。テレビも、マンガも、広告も、果ては教科書まで萌えの対象になっている始末だ。俺にはよくわからないが、妹、幼馴染み、ロリっ娘、ツンデレが四天王らしい。そういった分類のものが、教科書には多いらしい。  もうわけわからん。馬鹿かと。アホかと。お前ら猫も杓子も萌え萌え萌えって……意味わからん。そもそも──  萌えって何ですか?
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