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「おまたせ」
刺身を持って居間に戻ると、ちゃぶ台の前で背筋をピンと伸ばして正座をする河田が目に入った。
その姿が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
「足、崩せばいいのに」
「こっちのほうが落ち着くんだよ」
むっとした表情で河田は言った。
しかし刺身を見ると、河田は驚いた様子で目を見開いた。
「すげぇな!こんなにたくさん……」
「まだ向こうにもあるんだ、いっぱい食べてね」
刺身をテーブルに置くと、河田は子供みたいに目を輝かせてそれを見つめた。
「マグロ、イカ、エビ……なぁ、この白いやつは何?」
河田は皿を指差して、俺を見上げた。
「それはサヨリ」
「サヨリ?初めて聞いた。そんな魚いるのか」
「うん、見た目はサンマに似てるかな?今、サヨリは旬だから美味しいと思うよ?」
「へぇ」
そう言って、河田はまた皿を見つめた。
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