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失意の中で、自分の屋敷に戻ろうとした黄杏の目に、今度は、武術の稽古をしている紅梅の姿が写った。
ついこの前、他の妃に行くようにと仕向けろと言われ、それに従ったせいで、今こんなに苦しんでいる。
今だけは、会いたいくない。
黄杏は、紅梅に見つからないように、忍び足で戻ろうとした。
「こんな時間に、何してるの?」
だが黄杏は、あっさり紅梅に、見つかってしまった。
「……水を飲みに。」
「へえ。それでもしかして、井戸に行ったの?」
紅梅は、刀の素振りをしながら、次から次へと質問してくる。
「ええ……」
「お馬鹿さんね。そのついでに、見たくもないものまで見てしまって。」
黄杏は、紅梅のその言葉が、気になって仕方なかった。
「知っているの?」
「知ってるわよ。お妃になって、何年になると思ってるの?」
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