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第6話 嘘の住みか
急いで立ち去ろうとする黄杏の耳に、また卑猥な声が聞こえる。
「もう……だめぇ……信志様ぁあ!」
「青蘭……我慢しなくてもいいよ……」
黄杏はそのまま引かれるように、青蘭の屋敷の窓を覗いた。
そこはちょうど、青蘭の寝台になっているようで、異国のエキゾチックな中に、官能的なお香の臭いがする。
その上で何も纏わぬ信志が座っており、その上に裸の青蘭が乗っている。
青蘭はたわわな胸が揺れる程、激しく体を動かしているが、何よりも許せなかったのは、そんな青蘭の滑らかな肌を貪るように、口付けている信志だった。
黄杏は、近くにあった石を、青蘭の屋敷に投げようとした。
だが当たれば、何事かと大騒ぎになる。
「くっ……うぅ……」
胸が苦しくて、黄杏は拾った石を、地面に強く叩きつけた。
「はぁはぁはぁ……」
あんなに、毎晩情を交わしていたと言うのに。
あの甘美な言葉は、全て嘘だったのだ。
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