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とても狭く、歩くことも出来ないトンネルを這いつくばり、ようやく老人は最後のトンネルを抜けた。
そこにはただ高く、あまりに高い山がそびえ立っていた。
老人は絶望した。道が途絶えたことにではない。
トンネルが、人によって作られたものだと今の今まで気づかなかった自分にだ。
私は恥じた。心から恥じた。詰り踏んづけ見下してきた彼等が作った道を今まで私は歩いてきたのだ。
志半ばではない。彼等は辿り着いた果てで、それでも先を目指して道を拓いてきたのだ。
ああ、なんて私は自惚れていたのだろう。
ああ、なんて私は愚かだったのだろう。
いつも一人で歩いてきた。だがそれは、誰かの作った道だったのだ。
もう先も長くない。高き山を前にした老いぼれに出来ることはなんだろう。
私は這いつくばりながら、そびえ立つ山の麓で手を動かす。土を掻き分ける。
血が滲んでも、目が見えなくなっても、それでも?き続けた。
いつか私のように、孤独と焦りに塗れた誰かがここを訪れるだろう。
とても長く、果てしなく長いトンネルに果てはあるのだろうか。私にはそれを見ることが出来なかった。
とうとう、腕も動かなくなった。
鈍る意識の中で私は思う。
この先何人もが私の骨を踏み、軽蔑と憐憫の横目で過ぎてゆくだろう。だがそれでいいのだ。
私はようやく気づいた。
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