春の匂い

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 もはや口元のニヤつきが止まらない俺たちに、宮田は照れ隠しの仏頂面をしてぎりっと歯軋りをした。 「はー。そうやっておもしろがってりゃいいでしょこのゲスどもが!! 僕は良くても、その低俗なニヤニヤがピュアで繊細な須和くんの心を(けが)してるってことに気づかないんですか?」 「いいじゃないですか宮田さん、そんなムキににならなくても」  宮田の横で須和くんが柔和に微笑む。 「あなたのモジモジ顔が可愛いってことがお二人にも証明できて、俺は嬉しいですよ。それに、せっかくお二人が楽しみにしてくださってるんですから、昨日からのことも全部話しちゃうってことでどうでしょう」 「は……!? 須和くん、君って思ったより神経の太さがすごいな!?」 「じゃないとあなたの相手は務まりません」  とうとう俺と神岡は廊下にしゃがみこんで涙が滲むほど笑いこけた。 * 「宮田さん、めちゃめちゃ可愛いんです。ぶっちゃけやばいっす」  ピチピチなイケメン大学生の須和くんが、メロメロな恋人の話をするかのように宮田の話をする。ちょっと信じられない事態だが、紛れもなく現実だ。  ここまでとりあえず可愛い宮田の想像など1秒もしてこなかった俺たちは、新たな世界の扉を開けたような心持ちでそのノロケ話に食い気味に聞き入った。 「しかも、可愛いだけじゃないんです。本気な宮田さんの色気がガチで凄くて。そんじょそこらの美女なんか到底叶わない。好きな人と過ごす夜は天にも昇る心地ってよく言いますけど、冗談抜きで昇天するかと思いました」 「…………」  躊躇なく言い放たれる須和くんの言葉の赤裸々ぶりに俺たちは半ば唖然とし、宮田は真っ赤になりながら俯いて膝に拳をブルブルと震わせた。 「す、須和くん……いい加減その辺で勘弁してくれないか」
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