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「あ、ちょっと喋り過ぎました? すみません」
もはや消え入りそうな宮田の訴えに、須和くんはぽりぽりと頭を掻いてテヘペロっぽい顔をする。
「いや、全然いいんだよ須和くん。僕らも君たちの仲睦まじい様子を知れてこんなに嬉しいことはない。宮田くんは今後も君とのこういう惚気話を一切しないだろうから、君から二人の様子を聞ければ僕らも安心だ」
「そうそう。それに宮田さんが本気になるとその辺の美女顔負けの、そういう感じになるのかーっていうのは、素直にすごいなあ、と……」
「もーーーーー!!! 結局二人ともただ単にソッチの話に興味津々なだけじゃないですか!!」
顔を真っ赤にして声を荒らげる宮田に、神岡はふっとまっすぐな視線を向けた。
「いや、それは違うよ。
君たちが、本心をぶつけ合って漸く向かい合えたことが、僕らは本当に嬉しいんだ。
今聞かせてくれた昨日からの君たちのやりとりが、大袈裟じゃなく胸に刺さった。——君たちはそれぞれに、それほどに深く互いを必要としていたんだね」
俺も、神岡の言葉に強く頷いた。
「宮田さんっていつもめっちゃ薄っぺらいくせに、いざ大切な場面になるとびっくりするくらい不器用で、自分で自分の幸せぶっ壊しにかかるような危なっかしいところがあるよな。
その裏側にあるのっていつも、何だかんだで他人への気遣いや、優しさだったりする。俺たちも、これまで何度あんたの言葉や行動に救われてきたかわからない。確か、以前もあっただろ。俺が育児ノイローゼになりかけたとき、あんたが俺のヘルプに力を注ぎ過ぎて恋人が不満抱えちゃって……それが原因で恋人と別れたことがさ。
——俺も、いつも思ってた。いつか、あんた自身が、自分のための幸せを掴んでくれたらって。
だから、俺も、嬉しいよ。あんたが須和くんとこうやってしっかりと手を繋ぎ合えたことが、本当に……」
そんな話をしながら、不意に目の奥に熱いものが込み上げた。
ちょっ待て、こんなとこでこんなみっともない展開にするつもりないって! 涙が溢れ出るのを堪えたくて、俺はぐっと唇を噛んだ。
俺の涙が恐らくバレたのだろう。隣に座る神岡が俺の肩を優しく抱き寄せ、柔らかに微笑んだ。
「うん。柊くんのいう通りだ。
君たち二人には、幸せになってほしい。心から」
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