春の匂い

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 俺と神岡の言葉に、宮田もどこか苦しげに眉間を小さく歪めた。 「……僕、そんなふうに言ってもらえるような男じゃないはずなんですが」 「宮田さん、昨日も散々言いましたよね。もう自分自身をクズ呼ばわりしないでくれって」  須和くんが、宮田の顔を悪戯っぽく覗き込む。 「いい加減信じてください。俺や神岡さんや三崎さんが、これだけあなたを好きだって言ってるんですから」  須和くんはニっと笑みを浮かべると、俺たちに向けて深々と頭を下げた。 「ってことで、皆さんの知らない宮田さんの美味しいところは俺が全部独り占めすることになりました。よろしくお願いします」  その爽やかで若々しい態度に、俺たちにも自然に元の笑みが戻る。 「うん、大いに独り占めしてやってくれ」 「宮田さん、こんないい子にこんだけ惚れられて幸せもんだねえ」 「そうなんだよね。こんなに幸せで大丈夫なのかってめっちゃ不安なんだけど」  宮田もいつもの調子を取り戻しながら、冗談混じりにそんな言葉を呟く。 「……その不安はあながち外れてもいない……かもしれない」  そこに挟み込まれた須和くんの一言に、俺たちはギョッとして一斉に須和くんを見た。 「……す、須和くん? それ、どういう意味?」 「いや……  東條先輩がすんなり納得してくれるかどうか、と、それがちょっと不安になったもので……」 「東條先輩って、クリスマスイブに君に告白した、居候先の先輩だよね?」  微妙に青ざめながらそう問いかけた俺に、須和くんは複雑な面持ちで頷く。 「ええ。彼、相当に自分に自信のある人で。一旦決めたら自分の意思をそう容易に曲げないタイプなんです、良くも悪くも。  浮いた話もこれまで全くなかった人ですし……彼なりに、俺に本気で告白してくれたんだろうなと思うんです。その分、告白を断るのが大仕事になりそうな気がして仕方ないんですよね……  やば、考えれば考えるほど難しいケースかもしれません、これ……」
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