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「何度も言わせないでください! 俺が本当に欲しいものは、東條さんでは絶対に満たせないんですってば! あなたのその緩くて軽いキャラこそが俺を自由にしてくれるんだって、もう散々説明したでしょう!?」
「わ、わかった、もうこんな話二度としない……だから、あいつを選ぶとか絶対やめてくれ……」
「しませんよ、そんなこと」
須和はやれやれと言うように残りのビールを呷る。
自分の缶に伸ばしかけた手を止め、宮田がふと眼差しを上げて呟いた。
「……そうか。
うん、そうだよな……。
君を幸せにするには、まず僕が、僕自身を好きにならないとな……」
その呟きに、須和は驚いたように宮田を見た。
眼差しを須和に向け、宮田の呟きはやがてはっきりとした声になった。
「君が、僕を選んでくれた。
頭が良くて誠実で、しっかりとした中身のある、超男前な君が。
僕は、そんな君に選んでもらえるだけの男なんだって、堂々と胸を張らなきゃダメだよな。
それができなきゃ、今回の話が万一拗れたとしても、東條先輩をうまく説得なんてできるわけがない」
宮田を見つめる須和の目が、嬉しそうに輝いた。
「…………そうですよ」
「……うん。
何よりも大切なことに、やっと気づけた」
宮田の目が、これまでとは違う強く揺るぎない色を浮かべた。
大きく一つ頷き、須和が言葉を続けた。
「じゃあ、決めましょう。
明日、一月三日ですよね。明日の夜に会えるか、これから東條さんに連絡してみます。彼も三日の午後には実家から戻ると言っていたので、恐らく会う約束はできるはずです。
まずは、そこで話が丸く収まるように、全力で彼と話してきます」
「うん、わかった。何かあったら、メッセージでも電話でも、すぐ対応できるようにしておくから」
「お願いします。
それまでに、『誰が何と言おうとこいつは俺のもんじゃ! 文句あんのかオラ!!』って堂々と言えるようにリハーサルしといてください」
一瞬驚いた顔をした宮田は、すぐに満面の笑みを浮かべてぐっとサムズアップをしてみせた。
「うん。がっつりリハしとくから、任せとけ」
そうして、二人はようやく笑い合いながらビールを大きく呷った。
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