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いろいろな制限……それはつまり、「身体の関わり」を指したつもりだ。
妊娠中でも、セックスに必要以上に神経質になる必要はない、といろいろなところに書かれてはいるが……多胎児妊娠となると、話は違うようなのだ。
多胎児妊娠は、単胎児の場合に比べて、流産や早産等いろいろなリスクがぐっと高くなる。安定期に入るからと油断はできず、引き続き充分な体調管理が欠かせない。
「んーー……そうだなあ……
今回のケースは、やはり楽観視は禁物……どれだけ順調でも、それは変わらないのです。
なので、ここから先も、妊娠初期同様のストイックさで……」
そう言いながら、藤堂はどこか意味ありげな目で俺と神岡の顔をちらりと見た。
「……ですよね!」
俺も神岡も、そんな返事を明るく返したものの……
彼の内心の落胆ぶりが、手に取るように伝わってくる。そして、俺自身の落胆っぷりもまた、ぶっちゃけ彼と同レベルなのだった。
「…………
月に一度程度、ごく穏やかにならば……激しくするのは厳禁ですよ!
慎重に様子を見ながら……お腹の張りや出血など、何か異常があった時にはすぐに中断してくださいね。それでも異常が治まらない場合は、すぐに私へ連絡してください。……いいですか?」
そんな俺たちの様子を見て、彼はビシッとそう言い渡した。
「…………はい……」
俺たちが押し殺した心の声は、彼にはどうやら丸聞こえだったらしい。
*
「ごく穏やかに……だそうです」
その夜。
俺は、ベッドの上でどこか改まって神岡にそう囁いた。
「うん。わかってる。
絶対に、大事なものを傷つけたりしないように……そおっと、だな」
神岡は、自分自身にも言い聞かせるようにそう囁き返す。
とにかく、こういう時間は久しぶりなのだ。
ずっと堪えてきたものが流出寸前なのは仕方がない。
そっと彼の腕が伸び、俺の頬に触れた。
いつも側にいたはずなのに、なんだか随分長い間離れていたようなーーそんな不思議な感覚が、彼の温かい掌から流れ込んでくる。
優しく引き寄せられーー柔らかく、唇が重なる。
一つ一つのことをおろそかにしたくない、そんな気持ちが胸に満ちる。
互いのその甘さを味わうようにしながら、俺の背に回った彼の腕が、優しく俺を横たえた。
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