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問題は、かねてから気にかけている通りーー両親とも俺の現状をまだ一切知らない、ということだ。
電話で連絡をする際に、その事実も全部伝えてしまった方が良いのかどうか、散々迷った。
けれどーー結局、怖くて、できなかった。
もしも、万一電話口で「そんなことは絶対許さん!」とでも言われた日には、俺たちはまともに両親の顔を見るチャンスすら失うかもしれない。
そんな苦い思いを抱えたまま、出産に向き合ったりはしたくなかった。
ーー実際に顔を見て報告したからといって、俺たちのことや妊娠の事実をすんなり認めてもらえる保証も、一切ないのだが。
「ーー樹さん。
もしもうちの両親が、俺たちのことに強く反対したら……どうしますか?」
彼の表情の変化を見るのが怖くて……視線を下に向けたまま、俺はそう問いかけた。
「ーー認めてもらえるのを、待つよ。いくらでも。
もしも、すぐには理解してもらえないとしても……
僕たちが間違いなく幸せだ、ということだけは、何とかして伝えたい……そう思う」
彼らしい言葉とその穏やかな声に、俺はやっと顔を上げることができた。
彼の優しい微笑みが、俺を見つめる。
「それにーー
君のご両親に、もしも拒絶されたとしても……僕たちは、何も変わらない。
もし君がそれで悲しい思いをするとしてもーー
君には、僕がいる。
そんな痛みや悲しみから、君を守るとーー最初に、君に約束したろ?」
彼の言葉が、胸に染みるように嬉しかった。
「ーーそうですね。
誰に、何と反対されようと……俺たちは、何も変わらない」
自分自身にも、そう言い聞かせたくて……俺は、そんな言葉を繰り返すように強く噛み締めた。
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