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それから二十日が経ったある朝。
町長宅の前に魔族の文字が刻まれた木箱が放置してあった。見つけたのは町長の執事。
その中には、肘から下で切断されてどす黒く変色した右腕が入っていたという。少し歪んで不格好な装飾が施されたモリア銀の腕輪をはめていた。
勇者敗北の報を、アンナは店でいつものように剣を磨いている時に知らされた。もらった玉の小刀は、紐を通して肌身離さず首から下げてた。服の上から小刀を握りしめる。血がにじんだ。
「今回もだめだったか……」
オルスは肩を落とした。
「町長がすぐに山へ捜索隊を出すそうだ。オルス、お前も来るだろ?」
隣で炭家をやっているコトンが言った。勇者の件を知らせてくれたのもコトンだ。
「当然だ。アンナはどうする?」
「行きます」
アンナは一点の迷いなく言い放った。
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