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「あやめちゃん、今日はごきげんねぇ。何かいい事あったのかしら?」
「うん! あのね……」
目を細める八百屋のおばちゃんに今夜の事を話すと、まるでおばちゃんは自分の子どもの事のように祝いの言葉を掛けてくれた。
「あらあらまぁまぁ! こんなにちっちゃかったあやめちゃんも、明日から高校生なのねぇ」
「もうすっかりお姉さんね」と、感慨深そうに話すおばちゃんと、それから二言、三言言葉を交わし、あやめは目的の野菜を買って八百屋を後にする。
続いて向かった精肉店でも、店主のおじさんと八百屋さんと似たようなやり取りを繰り返した後、目的のお肉を購入。
ちゃっかりおまけしてもらったコロッケを頬張りながら、続いて豆腐屋、その次は雑貨屋と足を運び、スムーズに目的の品物を買いそろえて行く。
ほどなくして今晩の料理の材料を全て買い揃えたあやめは、購入漏れがないか、2回ほどエコバッグの中身をチェックした後、踵を返して商店街を後にしたのだった。
☆
閑静な住宅街の外れに位置する児童養護施設は、商店街からおよそ徒歩10分の距離である。
買い物袋を片手に歩くこのお使いルートは、10年ほど前までは毎回ちょっとした冒険気分を味わえたものだが、今となっては気軽なお散歩コースも同然だった。
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