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怖い怪物?
格好いい乗り物?
……分からない。
けれど、どちらにしても、このまま行けば彼を待つのは悲惨な未来だ。
キキィ!!
その時、不意にトラックから甲高い音が響いて来た。
ようやく眼前の男の子の存在に気付いた運転手が急ブレーキを掛けたらしい。
見ると、フロント越しの男性の顔が真っ青に染まっていた。
……だが、遅い。
このタイミングで急制動を掛けたところで後の祭りだ。
既にトラックには何十キロものスピードが乗っているし、トラック自体の質量も数トンはあるだろう。
このままでは、男の子の体は途方も無い衝撃によって撥ねられ、その幼い命を散らしてしまう。
だめだ、いけない……!
あやめは歯を食い縛って、目に涙を滲ませながら手を伸ばした。
……けれど、男の子まではまだ遠く、あやめの手は届かない。
……間に合わない。
「きゃああああっ!?」
そう思った瞬間、不意に、男の子の飛び出して来た公園の中から悲鳴が聞こえて来た。
大人の女性の悲鳴だった。
おそらくトラックのブレーキ音で状況に気が付いた男の子の母親のものだろう。
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