extra キスの次に

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あたしの昼間の心配とは比較にならないほど、お兄ちゃんにはいつもこんなふうに心配させている。 ちょっと情けない気持ちで笑った。 「ううん。これ、渡そうと思って」 紙袋からフォンダンショコラが二つ入ったマフィンボックスを取りだして、お兄ちゃんに差しだした。 赤いハートが散りばめられた四角い箱にはリボンをして、バラの造花を載せた。 「ここまで来なくたって……」 お兄ちゃんが云いかけている最中、その背後から社長と先輩たちが顔を覗かせた。 「お、寧音ちゃん、合格おめでとう」 「おめでとう。よかったね」 「はい。ありがとうございます」 「寧音ちゃんから連絡入るまでソワソワして仕事にならなかったみたいだからね」 社長の言葉に苦笑いしながらお兄ちゃんが、すみません、と謝っている。 その間に、別の箱を五個取りだした。
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