-寧音-

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「なんの仕事?」 「小さいとこだけど設計事務所だ。先生に探してもらった」 建築科にいるお兄ちゃんには打ってつけの就職先だ。 「そんなにすぐ見つかるんなら、早く先生に云っちゃえばよかったね」 何気なく云ったのに、どことなくお兄ちゃんの顔がかげった気がした。 さっきの『おれよりうれしそうに』っていう言葉がリンクして、あたしの中で何かが引っかかった。 お兄ちゃんに関するかぎり、あたしのアンテナは高性能になる。 「お兄ちゃん?」 「寧音、今日のバイトは遅くなるから。ちゃんと鍵閉めてろよ」 「わかってる。いってらっしゃい!」 教室に戻りかけて校舎に入る寸前、振り返るとお兄ちゃんはまだそこにいて、早く行けよ、というようにあたしの教室の方向を指差した。
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