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-輝也-
築二〇年になろうかとするアパートはメンテンスもろくにされないまま、ただ古びていく。
二階へと上る階段の手すりもあちこちが錆びついている。
そんなことも気にならないほど馴染んだ階段を上がりきると、左に折れた。
いちばん隅のドアに向かいながら、おれは家の中に灯りがないと気づいた。
寧音?
焦るようにドアを開けて照明をつけると、寧音の靴はちゃんとあった。
九時を過ぎていて、寝ているとしてもおかしくはない。
そう自分に云い聞かせるようにして、まっすぐ正面の部屋まで進んだ。
そっと戸を開けてから目に入ったのは、布団も敷いていない畳の上で、投げだされたように横たわった寧音の裸体。
おれの中で最悪のシナリオが浮かんだ。
「寧音っ」
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