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縋り付いた俺を沙織さんは微笑みを浮かべながら優しく頭を撫でる。
「大丈夫よ。薫ちゃんが私の妹でいてくれる限りは誰にも言わないわ」
「ほ、本当…?」
「ええ。本当よ」
俺はその言葉に安心し、胸をなでおろす。
「薫ちゃん。服を着るだけじゃつまらなくなってきたでしょ?今日はお化粧をしてみましょうか」
「お、お化粧…?」
「ええ。と言っても薫ちゃんは小学生だから軽めのお化粧だけどね」
沙織さんはそう言って俺から離れる。リビングから出ていき自分の部屋に向かうと、すぐに戻ってきた。その手には少し大きめの箱が抱えられている。
「これは私が使っているお化粧の道具よ。ソファーに座って」
「う、うん」
俺は沙織さんに言われるままにソファーに座る。そして、沙織さんはテーブルに箱を置いて俺の隣に座った。
「薫ちゃん。目を閉じて」
「うん」
沙織さんはテーブルを少しだけずらしてできた俺とテーブルの間のスペースで、俺の正面にくるとそこでしゃがむ。俺は目を閉じてこれからされる化粧に緊張した。
どれくらいの時間が経ったかはわからないが、肌を滑る化粧道具の感触がなくなり、頭に何か被された感覚と頬にちくちくした感触がある。
「薫ちゃん。目を開けて」
「……っ!?」
目を開けると可愛らしい少女がこちらを驚いた表情で見つめている。これが俺自身だと気づくのに少し時間がかかった。そして、化粧をされ、ウイッグを被せられて成人男性から少女へと変貌を遂げた自分を可愛いと思ってしまったのにも驚きを隠せない。
「ふふ。薫ちゃん。今。自分で自分の事を可愛いと思ったでしょ?」
「そ、そんなことは…」
微笑んで言う沙織さんに聞かれるが、無いとは言いきれなかった。もし、知らない人が見たら本当の女子小学生に見られるかも知れない。
「自身を持って薫ちゃん。今の薫ちゃんはどこからどう見ても可愛らしい女子小学生よ」
「わ、私は可愛い女子小学生…」
「ええ。とっても可愛い小学生の女の子」
沙織さんが耳元で囁いてくる。その可愛い小学生の女の子と言う言葉が頭の中でぐるぐると回り始める。
「あなたは誰?」
沙織お姉ちゃんの言葉に私はトロンとした目になり、微笑んで言う。
「私は村尾薫です。小学5年生の下着姿を見られるのが好きな女の子です」
今度は吃らずはっきりと言えた。それを聞いた沙織お姉ちゃんは微笑んで頷くと私の頭を撫でた。
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