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今日は金曜日。
"本日の降水確率は90%"だったはず、なのに。
「珍しいな今日の天気予報はハズレか…」
梅雨の中休みとでもいうような青空を恨めし気に眺め、手にしている2本の傘をぎゅっと握りしめた。
今日こそは、そう決めていたのに。
また来週に賭けるしかないのか。
いつものカフェに彼はいるのだろうか?
雨が降っていないのなら、いないのかもしれない。
金曜日の夕方、彼に会えた日はいつでも雨が降っていた。
歩いているうちに急に雨雲が立ち込めてきて、さっきまでの青空はすっかり見えなくなってしまっていた。
そうかと思ったら突然ザァーっと雨が降ってきた。
ゲリラ豪雨!!
傘を手に持っていることも忘れて走り出す。
いつものカフェに向かって。
──いた!!
いつも見かける店内ではなく、店先で雨空を見つめている彼。
今日もいつもと同様に、傘を持っていない。
絶好のチャンスがやってきた!
こっこっこれは、話しかけるチャンス!!
すっごくイケメンの彼。
きっと大学生なんだろうから、私よりも年下だ。
店先で雨宿り?
いまだ!いましかない!!頑張れ私!!!
「あ、あの、こんにちは!」
「………こんにちは」
ちょっと驚いたように私を見たイケメン。
「よくこのカフェでお会いしますね。今日は雨宿りですか?」
「いいえ、そう言う訳では……」
え?違うの??
「だって!いつも傘持ってないですよね?」
「ああ、傘なら間に合ってます。もうすぐ来るんで」
……もうすぐ、来る?
「フィリップ先輩~!!お待たせしました!!」
「遅いぞジョー、待ちくたびれた。ほら、貸せよ」
イケメン君はやって来た女子高生の傘を奪い取ると、相合傘で仲良く去って行った。
「先輩、あの女の人誰ですか?」
「さあ?もしかしたら秘密結社"猫の爪"のメンバーかもな?」
………ちっ。
今日こそはチャンスだと思ったのに。
狙った獲物にあっさりと逃げられてしまった。
私はキャッチセールスをやっている新米セールスレディ。
今日こそはこの傘を売ることができると思っていたのに!!
やっぱり私にセールスなんて向いていないのかな?
こうなったら秘密結社"猫の爪"に入社しようかな。
END
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