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本編
(これが、噴水の山か……)
切り立った横に幅広い山は緑に覆われてはいるが、それが樹木よりも苔に依って彩られているのだと青年は知っていた。
湿った大地を踏む。
むわりとした空気を体に浴び、取り込みながら考える。
(話しには聞いてたけど登るのは骨が折れそうだ……足を滑らせない様に工夫しなくちゃな)
小さな相棒と一緒に見上げ頭を悩ませるのは、目尻の下がった細い眼差しを持つ優男風な顔立ちの若者である。その相棒はいたずらっぽく笑えば小悪魔的な可愛らしさを持つ顏立ちを見せ、人間の大きさならば表情と合わせて蠱惑的な雰囲気を醸し出すであろうスタイルを身体と同じく自身の魔力で編まれた妖精特有の挑戦的なドレスに身を包んだ美しいながらも小さな少女だった。
「どんな魔物がいるのか――どんな味がするのか――楽しみだわ!」
頭を抱える若者とは対象的に矮躯に見合わぬ胃袋と見るに愛らしい容貌と一致しない奇特な趣味を持った妖精はいつでもこんな風に観光気分でいて、自覚しないまでも緊張を解してくれる心強さ、頼もしさが有った。
ただ、付け加えるならば魔物を食うと言う発言からわかる通り悪食でもあるから、ピーターは呆れてもいた。
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