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それが聞こえた瞬間、ピーターは駆け出すというよりも、X軸方向への跳躍というような接近をしてみせる。
そして、鼠の喉元を両刃の剣で突き刺して横に裂いてから、反撃を防ぐために蹴り飛ばしていた。声を上げるまでもなく死にゆく様は、ガントにとっては突風が起きたと思ったら霧の向こうで血飛沫が飛び散った様にしか見えず、返り血を浴びて戻ってきたピーターにも恐怖を覚えていた。
……軟膏の正体は人間であれば呼吸困難に陥らせ、死をもたらす様な猛毒。
飲んだ液体は筋力を二、三倍に強化する薬で、効果は短い時間で終わるが即効性のものなので強襲する際に愛用していた。
その薬を創ったのは、自分だと胸を張るティンクの種明かしは、そんなところだった。
「先を急ごう、時間が経つと、短期間休眠が終わった奴らが増えるんだろう?」
「あ、ああ……」
男が躊躇う様子で居るのは、魔物に浴びせられた殺気のためか、ピーターの戦闘力とティンクの薬のためか……。
少なくとも、ピーターの戦いぶりを見たガントは自分達の度胸を称えたくなった。
(……こいつ等を殺そうって考えなかった俺達は正しいぜ、親父。あっと言う間に殺られるだろうさ)
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