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――大きな鐘の音と鉄砲水の轟音が奏でるハーモニーが聞こえてきたのは、優男がマスクに見合わぬ守銭奴的感性を働かせた時だった。
「ボートに乗れ!」
二人が難を逃れる事ができたのはこの地域でよく見られる浅黒い肌を持った男の親切な叫びと旅人の為に用意されていたボートのおかげだった。
(空家で休むって人にも配慮されてるってことなんだよな)
背後をちらと見て、振り返ってから感謝の言葉を告げた所で男は言う。
「どう致しまして。ところで、東の人間がこっちまで入ってくるのは珍しいな」
西の人間に比べて色白なピーターとティンクを見てそう言う。
東の人間であるピーターからしても、確かにいつもはどうか知らないが、今日は全く見かけなかった。
「あの山の伝説だとかの観光で来たのよ」
ティンクが言うと男は、
「すると、あんたらが親父の依頼を受けてくれた冒険者かよ?」
と、食い気味に言ってから自分が町長の息子だと名乗り雨が降った後の河川の様な状態になった道を、ボートで村長の家まで連れてくれる事となった。快適な乗り心地はボートの操縦に慣れている事をうかがわせる。
しかし、
「ちょっと、依頼ってどういう事? 私たちが来たのって、山登りで美味しい魔物を食べるんじゃないの?」
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