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口止め料と言う事もあって予想外の大金を旅費と個別にもらえたことに、見た目は金銭の為とは思えない様な柔和な笑みを浮かべながら安心させようと言う。
「……観光、できないわね」
えーと縄梯子に、スクロールに、フック付きのと普通のロープ、それにマトック……。
そんな風に声に出して確認しているピーターを尻目に浮かべたその表情は、言葉とは別の事に失望するように見え、どこか苦渋を飲みあぐねているようにも見えた。
(あなたは、いつからこうなってしまったのかしらね……)
ティンクにはその自問の答えを誰かに聞かなくともわかっていて、それが故に苦しくて、それそのものも苦しかった。
「……何であんたが付いてきてるのよ」
ティンクの冷たい視線と分かっているのに喧嘩腰で聞くと言う八つ当たりそのものの詰問はピーターから少し離れて同行しているガントと名乗った町長の息子に向けられたもので、場所は噴水山の中腹辺りだった。
ティンクは犯罪の実態、それもちっぽけなものでなくとても大きな物を知ってしまったのだから口封じをしようとしているのではないかと勘繰っていて、頬杖をついていた。
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