桃太郎

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桃太郎

  遠い昔、まだ元号も無い時代の鬼ヶ島。 そこでは独自に文明を発展させた数万体の鬼達が田畑を耕し、街を作り、現代の日本に勝るとも劣らないくらいの近代的な生活をしていた。 ーーーーーーーーーーーーーー 「だ~か~ら~外敵からの脅威に備える為に俺たちにも武器が必要だと言ってるだろ!」  その鬼ヶ島の頂上にある大きな建物。そこの主に会議室として使われる場所で怒声を上げたのは、もじゃもじゃ髪でウールの黒い衣を身にまとった赤鬼。名を彌助(やすけ)と言う。  現在、彼を最前列の中心にして縦五列、後ろ五列に並べられた椅子に赤鬼達が計25体座っている。 それに向かい合うようにして座ってるのが。 「い~やっ!お前達はもう忘れたのか?先祖の犯した殺戮と強奪の過ちを!絶対に繰り返してはいけない!武器を作るなんてもってのほかだ!」   六兵衛(ろくべえ)率いる、同じく25体の青鬼だ。彼らも赤鬼らと同じ衣を纏っている。  そして左右に分かれたその2種類の真ん中やや後方。そこには赤鬼や青鬼達と同じ服を着て、同じように並んではいるが、話し合いには殆ど参加してない俺達の黄色、さらには緑、黒など複数の色が入り交じった集団があった。自分達の色は赤や青に比べて圧倒的に少ない希少種ということで一纏めにされて座らされている。  この島では色毎(いろごと)に思想があり、だからこそ目の前の鬼たちは対立しているわけだが、そうなってくると当然自分にもそれぞれの意見がある。だが如何せんマイノリティーの意見は多数決になると弱くて殆ど通らない。なので諦めて、ここ数年は意見せず傍観の姿勢を取っているのだ。 「これは前にも言ったはずだ。何も別に人間どもを殺すための武器を作るんじゃない。俺たちを守る為の武器だと何遍説明すれば分かるんだ!」 「うるさい!どうせ最後には目的がすり変わってるに違いない!」 赤青双方のトップの横と後ろから「そうだそうだ~」とか「話をずらすな~」とか色んなヤジが飛び交っている。
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