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「しかし元也さんの言うことももっともです、盗まれた金塊を確認した方がよくありませんか?」
私は元也の肩を持つわけではないが、窃盗の状況を知りたかった。
「そうじゃの…。」
金庫に近づいた元斎は中を確認すると言った。
「大体じゃが半分ほど無くなっとるかのぅ…。」
「半分というと?」
「100くらいかのぅ?」
「金塊が100ということは200あったんですか?」
「そういうことじゃ。」
「あの…変な質問かも知れませんけど、なんで全部取らなかったんでしょうか?」
「…ん?そりゃ重かったんじゃないかのぅ?」
「重かった?」
「そうじゃ、1個大体15キロはある金塊じゃて。100個取っただけでもよくやったもんじゃよ。ふぉふぉふぉ。」
そういうとまた笑う元斎だった。
「100で1500キロか確かにトラックでもないと無理そうですね…。」
「トラック?」
元成が突然驚いた様に言った。
「どうしました?」
「いや、トラックなんてこの屋敷の中に入れないよ。」
「え?そうなんですか?」
「うむ、安全のため塀の中には車が入れない様な構造になっておるし、ここはほぼ屋敷の中心……1番近い塀から100mは離れているじゃろうて。」
「なるほど…QEDが金庫を破ってもさらに運ばないとダメってことですね?ますます不可能ですね。」
「そのQEDってなにかの暗号なのか?」
元也がずっと疑問だった事を口にした。
「QEDは数学の証明の最後に書かれるもので、以上証明終わりって意味ですよ、今はあんまり使われないらしいですが…。」
「え?それで?それってなんの意味があるんだ?」
「そうですね…つまり犯人はこう言いたいんじゃないですかね?ほら、開けられたでしょ?僕に開けられない金庫はないんだよ。以上証明終わり。」
「…なんてやつだ。」
それを聴いてまた元也は歯噛みをし元斎は豪気に笑った。
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