不可能の扉

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「きゃーーー!!」 「あぁ!」 「え?」 ゴトンッ パリーン 誰かがなにか落として割った音がした。 突然の停電にそこかしこから悲鳴やら叫び声やらが聴こえてきた。 先程まで賑やかだった会場は瞬時におどろおどろしい雰囲気に飲まれ誰もがいきなり訪れた暗闇に目を慣らそうと辺りを凝視(ぎょうし)している。 「おい!誰か!ブレーカーを!」 たぶん声からしてこの館の(あるじ)の息子であろうか…。 たしか名前は鷲尾元也(わしおもとなり)だったと記憶している。 「は、はい。」 若いメイドらしき女性の声が応え、声のした辺りからどこから取り出したのかライトが照らされて広間を出ていくのが見えた。 「皆さん、動かないでください。何かが割れた音がしましたので破片が落ちてるかもしれない。迂闊(うかつ)に動くと危ないです。いま、我が家の者が対処してますので暫くそのままでお待ちください。」 そう声を張り上げたのはこの屋敷の(あるじ)鷲尾元斎(わしおげんさい)で間違いないだろう。 (しわが)れた声だがよく通る声でもある。 御歳(おんとし)70になるが、まだその声には人を従わせる威厳があった。
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