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「なんのことはありません、私の説が有力な事を立証してるのですよ。」
ピエール尾張は勝ち誇った様に言った。
確かに不審な人物の出入りがないとすると、運んでないというピエール尾張の説を補強することになるが…同時にもっと重大な事に気がつく。
「あの…ということは犯人の出入りも確認出来ていないという事ですか?」
私は警備の山田さんに聞いた。
「はい、犯人もです。」
「ということは……。」
まさか、まだ犯人が屋敷の中にいるのか?いや、もしかしたら…。
「もしかしたらこの中に犯人がいるかもしれないってことか?」
元也が言いづらいことをサラッと言ってのけた。
「こら!滅多な事を言うもんじゃない。」
元斎に叱られてまた元也は小さくなった。
「いや、まだそうと決まったわけではありません。監視カメラの死角から逃げている可能性もありますから。」
私はそう言って皆をなだめた。
「監視カメラに死角なんてありませんよ。」
山田さんが余計な…いや、有益な情報を言ってくれた。
「じゃあ、やっぱり…屋敷の中に……。」
「ひっ!」
誰かの叫び声が聴こえた。
群衆はザワザワとあらぬ妄想を話し始めた。
パンッ
手を打った様な音がしてそちらの方を見ると元斎が皆を見据えて言った。
「落ちついてくだされ。何があってもこの元斎がお守りしますゆえご安心召され!」
「ま、守るといっても武器でもあるんですか?」
誰かが言った。
「いや、武器はないが覚悟はある。イザとなれば全財産投げ打ってでもお守りしますゆえ。」
皆、それをきいて少し落ち着きを取り戻した。
逆にソワソワしだしたのは元也だけだった。
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