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「失礼。」
そういうと、私は唐突にピエール尾張の袖を手で掴んだ。
「なっ!なにするんですか?!」
ピエール尾張は驚きと同時に抗議の声をあげた。
「いえ、先程から気にはなっていたんですが、袖の動き方がおかしいなと、まるで何か入っているような。」
「ちょっと!やめてください!」
ピエールは振り解こうと藻掻いた。
しかし、僅かながら私の方が腕力があったようで、なんとか目的のものを探り当てた。
「これ、なんです?」
私は奇術師の袖の中に隠してあったペンシル型のものを取り出した…まるで、金庫の鍵と瓜二つである。
「え?それは……ただの手品のタネです。予め仕込んでおいていたんです。」
「ほう…タネですか?私が見たところ、あなたのマジックで、偽物を使う必要なんてありましたっけ?本人から預かったものがバナナからでる。それだけのマジックのどこに?」
「それは……。企業秘密ってやつで。」
「ふむ…いいでしょう。では念の為、これを使って金庫が開くかどうか、試してもらいましょうか?」
「な…。なんでそんなことを。」
ピエール尾張は少し引きつった様な笑顔で言った。
「いえいえ、万が一ですよ。万が一この鍵が本物なんて事になったら、窃盗になっちゃいますからね?疑惑は晴らして置きたいでしょ?」
「ちょ…いや、それは…。」
私は有無を言わさず元也にピエール尾張が持っていたペンシル型のものを投げた。
元也はうまく受け取ると、コックリと頷きそれを金庫にさした。
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