マジックの失敗

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しばらくして一筋の光がペンシルの後ろから真っ直ぐに伸びる。 元成は鍵穴を覗き込む様にその光を目で受け止めた。 …。 ……。 ガチャン。 元也が扉を引くと、ゆっくりと開いた。 全員の視線がピエール尾張に集まる。 「あの……。違うんですよ。」 ピエール尾張は顔を引き()らせながらそう言った。 「何が違うんですか?」 ガチャ 私はそう言葉を掛けながら(おもむろ)に手錠を掛けた。 「あ、ちょ、だから、違うんですって!」 「だから何が違うか言ってみろと言ってるだろ。」 元也が憮然(ぶぜん)として叫ぶ。 「いや、その…見たら返そうと思ってたんですよ。」 「何を?」 「だから鍵を。」 「鍵を返そうと思ったって事は取ったことは認めるんだね?」 「ま、まぁ、認めます。」 「貴様!金塊をどこにやった!」 元也が堪らず吠えた。 「いえだから!金塊は知りません!」 「何言ってるんだお前?今取ったのは認めるっていったろ!」 「いえ、だから、違うって言ってるんですよ、取ったのは鍵だけ、それもちょっと見てみたかっただけで…。」 「なんだそうだったのか。」 「はい…。」 「……て、誰が納得するか!このタイミングでそんな都合の良い言い訳が通るかどうか考えてみろ!」 「通らないですか?」 「当たり前だろ!」 「ですよね。わたしとしたことが…。」 ピエール尾張はガックリと肩を落とした。
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