不可能の扉

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暫くして会場の照明が戻ると会場に居た20名ほどの人々から、ほっとした声が漏れ聞こえてきた。 辺りを見回すと確かに大きめの花瓶が停電の時に誰かが倒したらしく割れて粉々になっていた。 ブレーカーを上げた若いメイドが帰って来ると(あるじ)の鷲尾元斎がすぐに花瓶の欠片を片付ける様に指示した。 「そういえば、椿(つばき)はどこだ?」 鷲尾元斎は若いメイドに聞いた。 「椿さんですか?さぁ?わかりかねます。休憩でもされてるのでは?」 「こんな時に休憩?後で叱っておかねば。」 そういうと元斎は渋い顔をより一層渋くした。 「…とりあえず、掃除道具は二階にありますので取ってきます。」 「うむ、すまんな桜。」 桜と言われた若いメイドは年の頃は二十歳前後といったところだろうか。 名前の如くほんのりと桜色をした頬の可愛らしいといえる顔立ちで黒髪を後に束ねてポニーテールにしている。 こちらの視線に気がついたのかチラッとこちらを見たが何故か顔を背けて主人に向き直ると、ぺこりと頭を下げてそそくさと宴会の広間から出ていった。 私はこういう態度を取られることがままある。 おそらくなのだが女性的な恥じらいの様なものなのだと考えるようにしている。 何故なら私は高身長でイケメンであるので、女性はだいたい極端に好意的な態度になるか、極端に素っ気なくなるかのどちらかなのだ。 いや、もちろん自慢とかではなく、客観的な事実を述べてるだけで他意はない。 とは言え全くなんの反応もない女性もいる。 例えばあそこで、割れた花瓶を観察している女の子。 女の子?あんな子供がこのパーティーに呼ばれていることに少し驚いた。 いづれにせよそんな事は瑣末な事である。 何故ならそんな事が小さな事に思えるほど私の仕事はトラブルが絶えないからだ。 「きゃー!」 ほらね、こんな風に、、、え? そんな私の思考を遮るようにどこからか悲鳴が聴こえた。 私は声が二階からであると推測し、素早く二階に向かう階段を駆け上がった。
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