奇術師の推理

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「それでも僕はやってない。」 ピエール尾張は小説のタイトルみたいな事を言った。 「おいおい、まだ減らず口叩くのか?」 元也が睨みつける。 「あのぅ…真犯人かどうかわかりませんが怪しい人を知ってます。」 「なんだと?ふざけてるのか?」 「まあまあ、聞こうじゃないですか?」 私は元也を(なだ)めてピエールに先を喋らせた。 「あの停電ありましたよね?あれをやったのは桜さんです。」 「はあっ!なに言ってくれてるの?!」 桜さんも(たま)らず声を荒らげた。 「いえ、うそではありません、たまたま部屋の隅でしゃがんでいるのが見えたんで声を掛けようとしたらコソコソ何かしてらっしゃるのを見てしまって。」 ピエールは口に手を当てて驚いた、という表情を作った。 「こ…コソコソなんて…してないわよ。」 ちょっと桜もキョドりだした。 「あなた、使用禁止って書いてあるコンセントに携帯の充電器をさしてショートさせてましたよね?」 桜は目を見開いてフルフルと顔を横に振った。 「本当ですか?」 私は聞いた。 「し、知らない!」 「桜さん?もし本当なら正直に答えないと、後でより大きな疑いになってしまいますよ?」 「あ…あの……。」 「はい。」 「昨日までは使えたんですよ。」 「え?」 「いえ、あのコンセント、使用禁止とは書いてあるんですけど…昨日まで使えてたんで……それで…。」 「使ったんですね?」 「……はい。」 桜は消え入りそうな声でそう言った。
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