奇術師の推理

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「あなたも不用意に犯人扱いするのはどうかと思いますよ。」 私はピエールに釘を指した。 「おや、私は不用意に犯人扱いされてますけど?」 ピエールはそういうとすました顔をした。 「あたりまえだろ!」 元成が言った。 私はまあまあというゼスチャーをした。 「そういえば、推理の途中でしたね…続けますか?」 「もちろんです。ここからが本題ですからね。」 「ほう。」 「この不可能にも見えるセキュリティの中で金塊を運び出す方法ですが…。」 「確かにそれが1番知りたいですね。」 「それは…。」 「それは?」 ピエールはまわりの人々を見渡したあと手品を披露する時の様に1拍置いた。 「……と、その前に真犯人を見事当てられたら私の微罪は見逃してくれません?」 ズコー! 私はまた、心の中でコケた。 が…まあ、気持ちは分からなくもない。 「その、方法はあなたでは無理なんですね?」 「私にも出来ますが…そいつらを捕まえたら私が仲間でないことが分かるでしょ?」 「あ、まあ、そうですね。私の一存ではなんとも…元斎さんはどう思います?」 「ん?そうじゃの。鍵を僅かの時間盗んでたくらいは多めにみようかのぅ。真犯人が分かるのなら。」 私は頷くとピエールに向き直った。 「だそうです。」 「わかりました。ではお教えしましょう。」 ピエール尾張は普段の落ち着きを取り戻して、マジックのタネを明かす様に言う。 「それは救急車です。」 「え?」 誰もが耳を疑った。 「まさか救急車で運んだと言いたいのか?」 元成が言った。 「そのとおり。」 「バカ!救急車まで100メートルはあるんだぞ?」 「そこまで、病人を運ぶ台車があるでしょう?」 「あの台車か…でも、下には何も入りそうなところはなかった様な…。」 「鏡ですよ。」 「鏡?」 「周りの風景を反射させて、まるで空洞の様に見せる…マジックの初歩です。」 ピエール尾張はどうだ、という様に皆を見渡した。
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