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「どうしましょう?たぶん、主犯格である尾張を捕まえる事が出来ましたが、パーティはお開きという事で…。」
私はピエール尾張こと尾張照明が居なくなってから鷲尾元斎に向き直って言った。
「うむ、そうじゃの椿も入院してしまっては饗にも不備がでるじゃろうし…。」
元斎はそう言って頷いた。
「いや、父さん。桜もこう見えてなかなかやるんだよ?なあ桜?」
突然、元也に褒められて桜は焦った。
「え、あ、はい。椿さんには及びませんけど…。居なくなる椿さんに代われる様に精進しています。」
そう言って少し照れながら満更でもない笑顔を見せた。
「ん?居なくなる?」
元斎は聞き返した。
「え?いえ、椿さんはあの…ご高齢なので、お辞めになるって……元也さんが」
「なんじゃと!ワシは聞いとらんぞ!」
元斎は元也を睨んだ。
「あ…いや、父さんはほら三年ほど入院して不調だったから、要らぬ心配をかけるのもなんだと思って…こちらの事はこちらで…。」
「おい、いつからお前そんなに偉くなったんだ?しかも椿を辞めさせる?ふざけるな!」
元也は元斎の剣幕に縮み上がった。
元斎も興奮して客人が居ることを忘れている様だ。
「ご、ごめんよ父さんがそんなに怒るとは思わなくて…。で、でも、椿も1つ返事で既に出ていく為の部屋も借りてるって言うし。そんなに未練はないのかと…。」
「…ばかな。そんなはずは……ない。あいつは20歳の頃からここに仕えて…。ワシの…。」
元斎はそこまで言うとガックリと項垂れた。
「あ、あの。そういう話は椿さんが回復してからゆっくりとうちうちでされた方が…。」
私はこんなに我をわすれる元斎を見たのは初めてだった…。
そういえば、椿さんが倒れているのを見つけた時も…。
そこまで考えたとき客人の中で手を上げてる小さな女性に気が付いた。
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