小さな探偵

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「お花摘みでしたらそこからでて右の奥ですよ。(小声)」 私はその小さなレディが恥をかかない様に側まで近づくとそっと耳元で(ささや)いた。 「ち、違います。」 小さなレディは頬を少し赤くして否定した。 「おや、ちがいましたか…。ではなんでしょう?」 「あの、ちょっと質問がありまして。」 「なんでしょう?」 「先程、ピエールさんの本名を言われたと思いますけど、どんな漢字なんですか?」 「漢字?ええと、明るく照らすと書いて照明(てるあき)です。なかなか良い名前ですよね。」 「それ偽名だと思います。」 「え?なぜです?」 「逆に読んで下さい。」 「逆に?……きあるて…」 「そ、そうではなくて姓と名を逆です。あと尾張はそのままで名前は読み方を変えてみて下さい。」 「照明(てるあき)の違う読み方?……しょうめいですか?……あ。」 「そうです。しょうめいおわり。」 「あいつ!やっぱり怪盗QEDか!」 私は興奮して言った。 「そうだと思います。なので、あの人は犯人ではありません。」 「ですよね…。全く………え?」 「たぶん、あの人が怪盗QEDで間違いありませんので、犯人である可能性は低いと言ったんです。」 私は2回同じことを聞いたのだが、ちょっと言ってる事が分からなかった。 まあ、相手は子供だし、そういうこともあるだろう。 私は大人の余裕を見せるためにニッコリと微笑んで頭を撫でようとした。 「きょうちゃん。何かわかったのかの?」 元斎が突然驚いた様に言った。 「おじ様その呼び方やめて欲しいんですけど。」 「いやいや、これは仕方なかろうて。きょうちゃんはきょうちゃんじゃからのう。ふぉふぉふぉ。」 いつもの様に笑う元斎をジト目で見る少女。 「せめて、ちゃんとしきょうと呼んでください。」 「これは悪かった。して、しきょうちゃん。なにか分かったんじゃろ?もしかして犯人か?」 元斎さんまで、何を言っているのかわからなくなってきた。 大勢の大人が頭を抱えている状況をこの子供に解決できるわけが…。 「はい。」 その少女はフルネームでちゃん付けされる方が一層恥ずかしい事に気が付きながら、そう答えた。
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