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階段を駆け上がると、突き当たりから二つ手前の部屋の扉が開いていてその前に若いメイドさんが尻餅をついている。
私は駆け寄った。
「どうしましたか?」
若いメイドさんの尋常ならざる様子にそう声をかけながらも空いてるドアの中をみると誰かが倒れている。
私は即座に中に入り倒れている女性に駆け寄った。
首に手を当てて脈があることを確認すると廊下で尻餅をついているメイドさんに叫んだ。
「まだ、息はある!持っている携帯で救急車を手配してくれ!」
私の声に、若いメイドさんはハッとした顔をした後、震える手で携帯を取り出し救急車を呼んだ。
その頃にはこの家の主人の息子鷲尾元也が駆けつけた。
「こ…これは…。」
鷲尾元也は中の様子を見て愕然とした。
「…なにがあったんです?」
一応先に来ていた私に元也は状況説明を求めるが、勿論私にもわからない。
「わかりません、しかし…まるで賊が入ったとしか思えませんね…。」
周りにある掛け軸などが破かれたり落ちたり、小さな仏像が倒れていたりとまさに荒らされたという言葉がぴったりの惨状であった…。
そして仰向けに倒れているメイドの横には重そうな花瓶が転がっている。
これで殴られたとしたらひとたまりもなさそうだが、倒れているメイドは運良くまだ息をしている。
「あ!金庫!」
倒れているメイドは目に入らなかったのか元也は部屋の奥の金庫の扉が開いている事を目敏く見つけるとそう叫んだ。
言われて私もそちらをみると確かに部屋の奥に嵌め込み式の金庫があり扉が開いている。
「な…なぜ空いている?」
元也は恐ろしいものでも見たようにそう呟いた。
「賊が開けたんでしょうか?」
私がそういうと元也は首を振って応えた。
「馬鹿な…無理だ…開けられる訳が無い…例えどんな人間だろうと不可能なはずだ…。」
まるで独り言の様にそう言うと金庫によって行った元也は震える声で呟いた。
「金塊が……盗まれている。」
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