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ゴホン。
私は意味の無い咳払いをひとつしてそのきょうちゃんと呼ばれたお嬢様に質問することにした。
「では最初の質問ですが…なぜ、怪盗QEDと目される尾張照明は犯人ではないんですか?」
「それは犯行目的です。」
「犯行目的?」
「はい、怪盗QEDは私もネットなどで見知っておりますが、窃盗犯であると同時に愉快犯ですよね?」
「まぁ、そうですね。」
「そして、その目的は難しい鍵を開けられるという自己顕示欲の方が、本来の窃盗よりも強いと感じます。」
「まぁ、そうだな…わざわざ自分がやったことを仄めかすようなものを残すんだから。」
「だとすると鍵を盗んで開けるというのはおかしな話です。」
「……なぜ?」
「本物の鍵を盗んで開けても自分の技術を証明した事にはならないからです。」
「あ。」
確かに言われて見ればそのとおりかもしれない…本物の鍵を盗んで開けるなら誰でもできそうだ。
「いや、しかし。」
「なんでしょう?」
「ではなんで彼は本物を盗んだんです?」
「それは彼が自分で言ってたと思いますが。」
「え?本当に単なる興味本位?」
「だと思います、鍵に固執する人間にとっては見た目が常識的な鍵ではない鍵はとても興味深いものだったんでしょう。しかし不測の事態が起こってしまってすぐに返さなくてはならなくなった。」
「金塊泥棒ですね?」
「はい。まさかこのタイミングで開ける人間がいるとは思ってなかった怪盗は焦ったと思います。」
「そうか、それで、多少不自然に見えても鍵を返す必要があったのか。」
私は納得と同時に驚いた。
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