24人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「犯人は椿さんです。」
少女の言葉に私は耳を疑った。
「え?椿さんは…あの椿さん?」
私は少しだけマヌケな質問をした。
「はい。」
「いま、病院で寝ている?」
「ですね。」
「本当に?」
「本当です。」
そう言われても、はいそうですかと納得はできない。
「あの…なぜ、そう思うのです?」
「それは椿さんが運ばれる時にしていた白手です。」
「白手?白手は普通の白手でしたが…。」
「はい、白手を嵌めている事が既におかしいのです。」
「なぜ?」
「椿さんは普段から白手を嵌めている人ではなかった。」
「まぁ、あんまりそんな人はいませんね。」
「だとすると、椿さんがこの部屋に入った後に嵌めたという事になります。」
「まあ、そうですね。」
「つまり、椿さんがこの部屋に入った時には部屋はこんな状況ではなかったという事になります。」
「……あ。」
「そもそも、扉を開けて、部屋がこんな状況であれば普通は誰かを呼びにいくか、桜さんのように悲鳴を上げるはずです。」
「…たしかに。」
私は二階に上がって桜さんが尻餅をついている所を思い出した。
「ところが椿さんは部屋に入って、白手までしている。部屋が荒らされた後の行動としてはあまりにも不自然です。」
「なるほど。」
「ところで椿さんは暗闇で襲われたと言ってましたので、停電の時に襲われたということになります。」
「ですね。」
「停電から桜さんが椿さんを見つけるまでどのくらいの時間でしたか?」
「え?たぶん10分から15分かな?」
「もしも部屋が荒らされてない状態で椿さんがこの部屋に入った後に犯人に襲われたとしたら椿さんを襲った犯人は椿さんを襲った後に時間もないのに部屋を荒らした事になりますね。しかも、部屋のものは取らずに…なぜそんな事をする必要があるでしょう?」
「…たしかに、すぐに逃げないといけないのに、暗闇のなかで部屋を荒らす意味がわからない。」
「結論として以下の事が言えます。」
「はい。」
「この部屋をこんな風にしたのは椿さんである。」
少女は以上Q.E.D.と付けたしそうな言い回しでそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!