二重の不可能の解説

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「あ、あの…。」 「なんでしょう?」 少女は落ち着き払って聞いた。 「仮に椿さんが犯人だとしても、どうやって金庫を開けたんでしょう?そして、金塊を…運べたんでしょうか?仲間がいたんですか?」 まさか、ここにいる全員が仲間とか…そんな恐ろしい想像をしたがスグに打ち消された。 「いえ、椿さん1人で運んだんだと思います。」 「え?1人で?どうやってこれほどの金塊を?」 「それは……こうやったのです。」 少女はそういうと先ほど元也が開けたままになっている金庫に近づいて行った。 ま、まさか実演するというのか? 少女は金庫の重い扉をゆっくりと閉めた。 …ガチャン。 重々しい音が響いて金庫が閉まった。 「………!!」 私は声にならない声を上げた。 閉まったはずの金庫がゆっくりと開いたからだ。 「どうやって?」 少女は振り返ると自分の携帯を見せてあるボタンを押した。 …ガチャン。 携帯の録音から金庫の閉まる重々しい音が流れた。 「……ま、まさか、こんな単純な トリックで。」 「馬鹿な…いつ?」 元也は目を見開いて言った。 「5ヶ月前でしたっけ?金庫を開けた時でしょう。元也さんと桜さんがはしゃいでる隙をついて、金庫が閉まらない細工をしたんでしょう。幸い金庫は少しの異物が挟まっても閉まらない設計になってるようですし。」 「それより、いつそんな録音を?」 「すみません、皆さんの声を録音させて貰ってました。」 少女は悪びれる風もなくそう言った。 「開ける方はわかった。しかしいつ運び出したんだ?」 元也がまだわかってないとばかりにそう詰問した。 「それはいつとは言えません。期間としては5ヶ月。一気に運ぶのは不可能ですがひとつならどうでしょう?荷物の中に紛れ込ませて運ぶのは容易ではないでしょうか?犯人はおそらく金塊をひとつひとつ運び出したんでしょうから。それを不審に思われないのは椿さんか桜さん。しかし、桜さんは入ったばかりで金庫を見るのも初めてでしょう?仮にはじめてでなかったとしても細かい金庫の仕様まではわからなかったはずです。消去法で最も疑わしいのは椿さんと言う事になります」 「く、くそ、椿のやつ。恩を仇で返すとはこの事だ!」 元成は地団駄を踏んだ。
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