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「あ、あの…。」
「なんでしょう?」
私は僅かに残った疑問を口にした。
「だとすると、椿さんの気絶も狂言ということですか?頭にできた傷も相当酷かった様に見えましたけど…。」
刑事が犯人の芝居に騙されてたとなると…相当かっこ悪い。
「いえ、あれは本当に気絶されてたと思います。」
「え?本当に気絶するくらい自分でやったということですか?」
だとしたら相当な覚悟だ。
「いえ、事故だったんでしょう。」
「事故?」
「はい…怪盗QEDと書かれた紙切れを金庫の前に置いてから、さも今しがた賊が入った様に見せかけるために部屋を荒らしていた椿さんは、あの花瓶を振り上げて床に叩きつけようとしてたのではないかと思われます。」
「なるほど。そこまでは椿さんの予定通りだったと…。」
「ところが予期せぬ暗闇に見舞われた。」
「桜さんのせいですね?」
桜さんはバツが悪そうに横を向いた。
少女は頷く。
「そこで、振り上げたところでいきなりの暗闇に戸惑った椿さんは手を滑らせてしまう。」
「な、なるほど。それで重い花瓶を頭に受けて気絶。」
「だと思います。自分でということも考えられますけど、リスクが高すぎます。たまたま桜さんに発見されたのが早かったから良かったものの発見が遅れたら大変な事になってたかもしれません。」
「たしかに…。」
「それに、自分で気絶したなら少しでも発見を早くして貰うために扉は開けておくでしょう?」
たしかに…。
私は心の中で頷いた。
「わかりました。では椿さんの意識が戻りしだい書類送検ということで…。」
私がそういうと、少女が元斎の方を向いてなにか言いたげな顔をした。
まだなにかあるのか?
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