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私は倒れているメイドを気にしながらも元也の言葉に反応した。
「窃盗目的の強盗ってことですか?でも、不可能ってどういう意味です?」
「不可能は不可能って意味だよ。」
元成はイライラしたような声を上げた。
「というと?」
私は倒れているメイドさんを観察しながらも、イライラに気が付かない風に重ねて聞いた。
メイドさんの頭部には打撲の跡があり、貴重品を扱う時の白い手袋をしていた。確かに部屋には所狭しと小さなサイズの仏像やら掛け軸、絵画と言った貴重品が並んでいる。
「あ、あとこのメイドさんが椿さんですか?」
私は重ねて聞いた。
小一時間前から姿が見えなかったのだが、先程の鷲尾家当主と桜というメイドとの会話からすると、そうである可能性が高い。
「あ?あぁそうだ。どこでサボっているのかと思えば、親父の部屋とはね。しかも、賊を取り逃がすなんてとんだベテランだよ。」
「…それは流石に無理かと思いますよ、命があっただけ良かったと思わなきゃ。」
気絶したまま酷い言われようのメイドを庇った。
「まぁ、なんだな…確かにあんたの言う通りかもしれん。辞める前に屋敷で亡くなったんじゃ怖くて住めなくなる。」
「辞めるんですか?」
「そうだよ、若く見えるけど、もう50になるからね。まぁ気持ちは20代みたいだがそろそろメイド服もキツくなってきたし身体が動くうちに退職金で自由に生きた方が良いんじゃないかって打診したら意外にすんなり受け入れたよ。」
その言葉を聴いて少し驚いた。確かに言われなければ30代くらいにしか見えない。
しかしそれは、仰向けに寝ていることも手伝っているのかもしれないなと思い直した。
ひとは上を向いた顔は若く、下を向いた顔は老けて見えるものだ。
「なぜ気持ちは20代だと思うんです?」
「…質問攻めだね。」
元也氏は少し不快感を示した。
「すみません…職業病でして。」
私は頭を少しかくゼスチャーをした。
これは、親しい先輩の癖が移ったのだ。
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