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「うむ…書類送検はしないでいただきたい。」
元斎は重々しくそう言った。
「な、なぜ?これだけの事をやったらいくら身内同然だと言っても見逃すのはおかしいよ!」
元也が堪らず抗議する。
今回ばかりは元成の言う通りだと私も思った。
「いや、そうではないのだ元也、身内同然ではない……身内だ」
「な、まさか……愛人?」
「…ふむ、ちと違うのう。きょうちゃん。」
「はい?なんでしょう?」
「もしや、わかっておるのか?」
「いえ、流石にそこまでは…しかし朧げながらであれば推論はできます。」
「では、その推論を聞かせてくれぬか。」
「わかりました。」
頷くと少女は元也にむかって言った。
「おそらく、椿さんは元也さんのお母様です。」
えーーーー!
私は心のなかで叫んだ。
なんでそうなるんだ?
「ば、ばかな事をいうな。」
元也はそういうのがやっとだった。
「どういう理屈でそうなる?」
「元斎おじ様の椿さんへの御様子と椿さんの元也おじ様への日常の態度、そして、女性がいつまでも若くいるというのはやはり誰かの為ではないかという事をかみして更に…。」
「更に?」
「年齢を考え合わせるとひとつの推論ができます。」
「年齢……だと?」
「はい、元也おじ様が産まれた時の元斎様の年齢は30歳、そして奥様は確か梅様でしたか?」
「…たしかに高齢出産だとは聞いていたが。」
「恋愛に年齢は関係ありませんが妊娠と出産となると関係がでてきます。」
「40でも産む人はいるだろ?」
「たしかに居ますが、確率的に考えると低いと言わざる負えない。それまで子宝に恵まれなかった事を加味すると更に確率は低くなります」
「まてまて、椿がここに来たのがたしか20だったはずだ。入ってすぐそういう事になったとしても出産までに10月10日ぐらいかかるんじゃなかったか?計算が合わないぞ?」
「つまり、椿さんがここに来る前。むしろそれがあったのでここに来たのでは?」
「ばかな!本妻がいるところにわざわざ来れるわけがないだろ。」
「それは梅様に聞いて見ないとわかりかねますが、ひとつの仮説として聞いてください。」
「…なんだよ。言ってみろ。」
元成は唸る様に言った。
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