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「子宝に恵まれなかった梅様は年齢の事もあり鷲尾家の跡取りの事を気に病んでたと思われます。そこで、降って湧いた様に椿さんの妊娠の事を聞かされたとしましょう。」
「…それで?」
「愛人などの子は鷲尾家として恥であると考えた梅様は同時に跡取りが欲しいという切実な願いがあった。」
「…たしかにそんな話は聞いた事がある。私は待ちに待つた子宝だったと…。しかし、自分の子ではないのだろ?」
「それで、苦肉の策で椿さんに一切の権利を破棄させた上で、元也さんと一緒に暮らす。つまり育てることを許可した。」
「……そんな。」
「…という推論ですが。どうですか?」
少女は元斎を見た。
「うむ、見事じゃ概ね当たっとる。少し違うのはそれを言い出したのは椿なのじゃ。」
「そうでしたか。」
「椿は財産や親権、手切れ金その他もろもろを全て断った。」
「なんと。」
あまりにも、元也と違う性格に驚いて声が出てしまった。
「うむ、しかし、そのかわり近くで育てる事を望んだのじゃ…もちろん本人にその事を言うことも許されん。」
「…そ、そんな。」
元也はなんとも言えない顔をしている。
「しかし、それをしらない此奴はあろう事か椿をこの家から出て行かせようとしおった。確かに、言わなかったワシにも非がある。椿は…たぶん裏切られたと思ったじゃろう。この部屋にある椿に買ってやったものはほとんど壊されておった。ワシに対する当てつけじゃろう?」
「だからって金塊を取っていいことにはならないよ。」
「いや、取っていいんじゃ…本来なら半分はあいつのものという事になる。自分はこれを受け取る正当な存在だと暗に仄めかしたかったのかもしれん。」
部屋になんとも言えない空気が流れた。
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