不可能の扉

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暫くして救急車が到着すると倒れている椿さんを担ぎ出そうとした。 すると持ち上げた拍子に少し意識を回復したのか椿さんは目を開けた。 「…あ、わたし…。」 「椿!」 「椿さん!」 「おぉ!椿。」 様々な声が聞こえるなか私だけが違う質問を投げかけた。 「…すみません、椿さん。誰にやられたのか覚えてますか?」 「…あ、あの。」 みんながしんと静まり返った。 「ごめんなさい。暗闇でいきなり襲われて…。」 「わかった…もう喋るな…。椿。」 そういったのは鷲尾元斎だった。 そのまま、椿さんは救急車に運ばれていった。 駆けつけた警察官に私は手帳を見せてここの指揮は私が取ると伝えた。 警察官は敬礼して出ていった。 「それにしても、警察の方をたまたま祝賀会に招いてたのは不幸中の幸いじゃった。」 鷲尾元斎はそう言って私を見た。 「いえ、結果として、好き勝手されているんですから…面目ないです。」 私は軽く頭を下げた。 いやいやと手を振って元斎は言った。 「いや、事が起こってからの迅速な対応は流石じゃ…家の息子だけなら未だに椿はそこに寝てたじゃろうて…。」 そう言って元也を一瞥(いちべつ)した。 元也はバツが悪そうにサッと目線を下げた。 もう40歳になるはずだがもともと父ちゃん坊やの様な顔をしている元也は怒られると子供のような顔をする。 しかし、当然ながらお世辞にも無邪気とは言えなかった。 「あっ。」 「なんじゃ?」 「これ!」 まるで元斎からの追求を逃れられるアイテムでも拾ったかの様に元也は落ちていた紙切れを拾った。 「なんじゃそれは?」 「なんでしょう?」 私と元斎は元也が拾った紙をみて同時に言った。 私は現場検証で使う白手を嵌めてからその紙切れを受け取るゼスチャーした。 「一応証拠品として預からせて貰います。あと、あんまり素手で犯人のものと思われるものに触らない事をお勧めします。後で犯人だと疑われてしまいますから。」 私がそういうと、驚いた顔をした元也氏は紙切れを渡しながら言った。 「そういうことは、拾う前に言ってくれ。」 紙切れには(わざ)と筆跡をわからない様におかしな持ち方、もしくは利き手ではない方で書いたであろう文字が並んでいた。 「…以上。Q.E.D.」 私は書いてある文字をそのまま読んでみた。
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